この記事を読めば5月16日が「旅の日」とされる理由と、その背景にある歴史がまるごとわかります。
「なんで5月16日なの?」
って気になったことがある方、けっこう多いんじゃないでしょうか。
実はこの記念日には江戸時代の俳人・松尾芭蕉と日本文学史に残る名作『おくのほそ道』が深く関わっているんです。
旅の日とは何か
制定の目的とその意味
「旅の日」は毎年5月16日に設けられた記念日です。
旅を愛する作家や芸術家たちによって結成された「日本旅のペンクラブ(旅ペン)」が、1988年(昭和63年)に制定したもので、日本記念日協会にも認定されています。
目的はシンプルででもなかなか奥が深いんですよね。
「せわしない現代生活の中で忘れがちな『旅の心』を大切にし、旅人とは何かという思索をあらためて問いかけること」。
それがこの日のテーマなんです。
5月16日が選ばれた理由
この日が選ばれた理由がまたロマンがあって印象的でした。
旧暦の元禄2年3月27日(新暦1689年5月16日)に俳聖・松尾芭蕉が弟子の河合曾良を伴い、江戸・深川の草庵から『おくのほそ道』の旅へと出発した日
それがこの5月16日なんです。
単純に「旅が好きな人が集まって決めた日」じゃなく、日本文学の名作と直結している。
そこが旅の日のほかの記念日と一線を画すところだと思います。
松尾芭蕉と奥の細道
芭蕉はどんな人物だったのか
松尾芭蕉は1644年生まれ、1694年没の江戸時代前期を代表する俳人です。
俳諧を芸術の域まで高めた人物として知られていて、「俳聖」という呼び名がそのすごさを物語っています。ち
なみに芭蕉は体が弱い人だったみたいで、それにもかかわらず何千キロもの旅を重ねたというのは、個人的にかなり驚いた話でした。
旅立ちの背景にあったもの
芭蕉が1689年に旅立ったのはただの思いつきではありませんでした。
実はその年が芭蕉が深く敬愛していた僧侶・歌人の西行(1118〜1190年)の500回忌にあたる特別な年だったんです。
尊敬する先人の命日の節目に自分も同じように旅に出る。
そういう気持ちが出発の動機のひとつにあったと言われています。
旅立ちの日の早朝、芭蕉は深川から舟で隅田川を上り、千住で多くの門人たちに見送られながら北へと歩き出したとされています。
奥の細道の旅のスケール
この旅、数字で見るとそのスケールにちょっと圧倒されます。
- 全行程
約600里(約2,400km) - 旅の期間
約156日間(5か月以上) - ルート
深川→日光→東北(陸奥・出羽)→北陸(越後・加賀・越前)→岐阜・大垣 - 1日に歩く距離
30〜40kmに及ぶ日もあった
徒歩で2,400kmというのは東京から下関を往復して、さらに余りがあるくらいの距離です。
体が弱いと言われていた人がこれをやり遂げたというのが、なんか信じられないというか。そういう感じ。
旅の終着点は岐阜県大垣市で1689年8月21日に到着。現在も大垣市には「奥の細道むすびの地記念館」が建っています。
旅立ちの句
『おくのほそ道』の冒頭には芭蕉のあまりにも有名な一文が刻まれています。
月日は百代の過客にして、行かふ年もまた旅人なり。
「月日とは永遠に旅をし続ける旅人のようなものだ」。
そんな意味合いの文章で旅の日の精神ともどこかリンクしている気がします。
出発当日の句としては「行春や鳥啼魚の目は泪(ゆくはるやとりなきうおのめはなみだ)」が知られていて、別れの情景を詠んだものとして語り継がれています。
日本旅のペンクラブとは
設立と活動内容
「日本旅のペンクラブ」は1962年(昭和37年)6月28日に設立された団体で、旅の文化の向上を目的に活動を続けています。
設立から半世紀以上が経ち、現在も旅に関する取材例会や観光振興への提言、自然環境保護などさまざまな取り組みを行っています。

「旅の日」川柳という活動
旅の日の代表的な活動が「旅の日」川柳です。
毎年1月1日から「旅」をテーマにした川柳を募集し、5月16日に大賞などの入賞結果を発表するという形式で続けられています。
大賞には賞金3万円と休暇村全村共通ペア宿泊券が贈られていて、国内在住者なら誰でも応募できるんです。
旅の日をただの「記念日」で終わらせず、実際に参加できる文化的なイベントとして育ててきたところが、この団体のすごいところだなと感じています。
旅の日に込められた現代的な意味
「旅の心」を問いかける日
旅の日が制定された1988年はバブル景気のど真ん中。物質的な豊かさが加速していたあの時代に、あえて「旅の心って何だろう?」と問い直す記念日を作ったというのは、なかなか意義深いんじゃないかと思います。
現代に置き換えても同じことが言えてスマートフォンとSNSに追われる日常の中で、「どこへ行くか」よりも「なぜ旅するのか」を立ち止まって考える機会としての側面が、この記念日には込められています。
旅は遠くに行かなくてもいい
旅の日は「遠くに行くべき」とは言っていないんですよね。
「旅人とは何かという思索を問いかけること」が目的なので近所を散策するだけでも、旅の本質に触れることはできるかもしれない。芭蕉自身も「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」という辞世の句を残しているくらい、
旅は身体的なものだけじゃなく心の動きそのものだと捉えていたんだろうなと思います。
まとめ:旅の日のポイントを整理
- 旅の日は毎年5月16日、日本旅のペンクラブが1988年に制定した記念日
- 5月16日の由来は、1689年(元禄2年)に松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅に出発した日(旧暦3月27日=新暦5月16日)
- 芭蕉は弟子・河合曾良とともに江戸深川を出発し、約2,400km・156日間にわたる徒歩の旅を行った
- 芭蕉が出発した1689年は敬愛する歌人・西行の500回忌という特別な年だった
- 旅の日の目的は、現代生活で忘れがちな「旅の心」を大切にして旅人とは何かを問いかけること
- 日本旅のペンクラブでは毎年「旅の日川柳」を開催し、5月16日に入賞発表を行っている

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