この記事を読めば5月20日が「ローマ字の日」である理由から、ローマ字の歴史・田中舘愛橘という人物・2025年の大改定まで、ひとつひとつわかります。
「そういえばローマ字ってなんで使うの?」
「ヘボン式と訓令式ってどう違うの?
」って疑問、一度は浮かんだことがあるんじゃないでしょうか。意外と深いんですこの話。
ローマ字の日とは?
5月20日に制定された背景
5月20日の「ローマ字の日」は1955年(昭和30年)に財団法人「日本のローマ字社(NRS)」によって制定された記念日です。
日付の由来には、ふたつの説があります。
ひとつは1922年(大正11年)5月20日に「日本ローマ字会」が創設されたことを記念したという説。
もうひとつは日本式ローマ字を提唱した物理学者・田中舘愛橘(たなかだてあいきつ)の命日である5月21日にちなみ、切りのよい20日にしたという説です。
この2つの説が重なって、5月20日という日付が選ばれたとされています。
日本ローマ字会とはどんな組織?
日本ローマ字会は「日本語による言語生活を向上させる」「日本語に合ったローマ字表記・カナ表記のつづり方の研究」「漢字の平易化」を目的として設立された組織です。
要するにローマ字を通じて日本語をもっと世界に開かれたものにしようという志を持った団体なんです。
ローマ字が日本に来た歴史
戦国時代のポルトガル宣教師が起源
ローマ字の歴史、実はかなり古い話なんです。
日本に初めてローマ字が持ち込まれたのは16世紀、戦国時代のことです。
キリスト教を布教するためにやってきたイエズス会の宣教師たちが、ポルトガル語に準拠したローマ字で日本語を表記したのが始まりとされています。
当時の宣教師たちは日本語をまったく知らない状態でしたから、発音を母国語に近い形で書き留める必要があって、自然とローマ字が使われるようになった。
そういう背景があったみたいです。
ヘボン博士と和英辞典の誕生
幕末になると流れが大きく変わります。1867年(慶応3年)、アメリカ人宣教医ジェームス・カーティス・ヘボンが『和英語林集成』を出版しました。
これが日本初の本格的な和英・英和辞典で和英の部に20,772語、英和の部に10,030語を収録した、当時としてはとてつもないスケールの仕事です。
この辞典の日本語表記に使われたのがのちに「ヘボン式ローマ字」と呼ばれるもの。
英語の発音に基づいているので、外国人が読んでも発音しやすいのが特徴です。
横浜で33年間暮らしながら医療活動と布教を続けたヘボン博士の功績は、個人的にはもっと広く知られてほしいと感じます。

田中舘愛橘とは何者か?
ローマ字を一生のテーマにした物理学者
田中舘愛橘(1856〜1952年)は岩手県二戸市出身の地球物理学者です。
本業は物理学でありながらローマ字の普及に生涯を捧げた、ちょっと変わった経歴の持ち主です。
東京大学在学中にヘボン式のつづりに疑問を持ったこと、それがすべての始まりでした。
「なんで日本語の五十音なのに、英語の発音に合わせた書き方をしなければいけないの?」
という素朴な問いが、のちに日本のローマ字史を動かすことになるわけです。
「日本式ローマ字」の考案
1885年、田中舘は五十音の体系に基づいた「日本式ローマ字」を学会に提出しました。
ヘボン式が「shi」「chi」「tsu」などのように規則から外れた表記をするのに対し、日本式は「si」「ti」「tu」とシンプルに統一されています。
日本語の仕組みそのままに対応させようという発想は今見ても合理的だと思います。1952年5月21日に96歳で亡くなるまで、彼はローマ字の普及活動を続けました。
ヘボン式、日本式、訓令式の違い
この3つぱっと見ると「なんか似てない?」と思うかもしれないんですけど、実は成り立ちがまったく違います。
| 表記方式 | 考案者/起源 | 特徴 | 例(「し」) |
|---|---|---|---|
| ヘボン式 | J.C.ヘボン(1867年) | 英語の発音に基づく。外国人に読みやすい | shi |
| 日本式 | 田中舘愛橘(1885年) | 五十音の規則に対応。日本語話者に馴染みやすい | si |
| 訓令式 | 内閣告示(1937年/1954年) | 日本式をベースに政府が公式採用したもの | si |
小学校の国語では長らく訓令式が教えられてきましたが、外務省はパスポートなどにヘボン式を採用するなど、日本国内でも統一されていない状態が続いてきました。ちょっと混乱しますよね、これ。
2025年の大改定 約70年ぶりの転換点
ヘボン式が正式な基本に
実は2025年、ローマ字に関してすごく大きなニュースがありました。
2025年12月22日、政府の内閣告示により、ローマ字表記の基本が「訓令式」から「ヘボン式」に約70年ぶりに改定されたんです。
1954年以来の大転換です。
新しい表記ルールでは「つ」は「tsu」、「じ」は「ji」、「しゃ」は「sha」と表記するヘボン式が基本になります。
これまで小学校の国語では訓令式で指導されてきましたが、2026年度以降は順次ヘボン式に切り替わる見通しです。

なぜ改定されたのか
訓令式は「国語を書き表す公式な方法」として定められていたのに、実際の社会では道路標識・スポーツ選手の名前表記・パスポートすべてにヘボン式が使われていました。
学校で習うものと実社会で使うものが違う、という「ローマ字の二重構造」が長年問題視されていたんです。
2025年8月、文化審議会がヘボン式を基本とする答申を文部科学省に提出し、それを受けて閣議決定・内閣告示と進みました。
ただ人名や地名、過去の作品表記については変更を求めないとされています。

まとめ
- 5月20日は「ローマ字の日」。1955年に財団法人「日本のローマ字社」が制定
- 日付の由来は「日本ローマ字会の創立(1922年5月20日)」と「田中舘愛橘の命日(5月21日)の翌切りの良い日」という2説がある
- ローマ字の日本への伝来は16世紀
イエズス会の宣教師たちによるもの - 幕末の1867年、ヘボン博士が和英辞典で「ヘボン式ローマ字」を確立
- 1885年、田中舘愛橘が五十音に対応した「日本式ローマ字」を考案
- 2025年12月、約70年ぶりにローマ字表記の基本がヘボン式に改定
- 2026年度以降、小学校教育もヘボン式に順次移行する予定

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