9月30日は「世界翻訳の日」ということをご存知でしょうか。
この記事を読めば世界翻訳の日がいつ誰によって定められたのか、その由来や歴史、そして今の翻訳業界にとってどんな意味を持つ日なのかがわかります。
毎年何気なく過ごしてしまいがちな9月30日ですが、実は国連まで動いた背景があるんですね。
翻訳や語学に興味がある方、通訳や翻訳の仕事に携わっている方にとっては、知っておくと会話のネタにもなりそうな内容だと思います。
世界翻訳の日とは何か
ここでは世界翻訳の日の基本的な位置づけと、なぜ9月30日という日付になったのかを解説します。
国連総会決議71/288で正式に制定
世界翻訳の日は翻訳や通訳といった言語専門職の仕事に敬意を示すために作られた記念日です。
2017年5月24日、国連総会が決議71/288を採択したことで、9月30日が「国際翻訳デー」として正式に国際デーの一つになりました。
この決議では翻訳という仕事が国と国をつなぎ、対話や理解、平和や発展に貢献していることが明確にうたわれているんです。
国連が動くまでには実はかなり長い道のりがあって、その流れは後ほど詳しく触れていきますね。
毎年9月30日に開催される理由
日付が9月30日に固定されているのはキリスト教における聖ヒエロニムスの祝日にちなんでいるからです。
聖ヒエロニムスは翻訳者の守護聖人とされている人物で、この日は彼の命日でもあります。
なぜ一人の聖職者の命日が世界的な記念日の基準になっているのか、ちょっと不思議に感じませんか。
次の章でその理由を掘り下げていきます。
世界翻訳の日の由来ー聖ヒエロニムスとの関係
ここを読むと世界翻訳の日がなぜヒエロニムスという人物に結びついているのかがわかります。
翻訳の守護聖人ヒエロニムスの生涯
ヒエロニムスは347年頃に生まれ、420年9月30日にベツレヘム近郊で亡くなったとされる聖職者です。
ラテン語や古典を学んだのち、キリスト教の教父として活動しながら、聖書の翻訳という大仕事に取り組みました。
382年頃、当時のローマ教皇ダマスス1世からラテン語聖書の改訂を命じられたことが、彼の翻訳者としての功績の出発点になったと言われています。
単に依頼を受けたというだけでなくヘブライ語やギリシア語を自分で学び直してまで原典に向き合ったという姿勢が、個人的にはすごく印象的だなと思います。
ウルガタ聖書という功績
ヒエロニムスが手がけた翻訳の成果は「ウルガタ」と呼ばれるラテン語訳聖書として結実しました。
新約聖書の校訂を先に済ませたのち、旧約聖書についてはヘブライ語のマソラ本文から訳し直す作業を行い、405年頃に完成させたとされています。
このウルガタは中世を通じて西欧世界で広く使われ、1546年のトリエント公会議ではカトリック教会の公式な聖書として認められました。
一人の翻訳者の仕事が千年以上も後の教会の公式文書に採用されるというのは、なかなかスケールの大きい話ですよね。
世界翻訳の日の歴史ー国際翻訳家連盟の取り組み
ここでは1953年から2017年の国連承認までの流れをまとめます。
1953年のFIT設立から1991年の制定まで
世界翻訳の日を最初に広めようとしたのは国際翻訳家連盟、通称FITという団体です。
FITは1953年に設立され、その頃から聖ヒエロニムスの祝日を「翻訳者の日」として祝う動きを各国の会員団体に呼びかけていました。
ただ最初のうちは非公式なお祝いに近い形だったようで、統一された記念日として定着させるための正式な提案が出たのは1991年のことでした。
FITの広報委員会がこのアイデアを打ち出し、理事会がそれを取り上げて世界中の翻訳団体に9月30日を一緒に祝おうと呼びかけたんですね。
グローバル化が進む中で翻訳という仕事の地位を高めたいという狙いがあったと考えられます。
2017年の国連承認までの道のり
FITが1991年に制定してから国連が承認するまでには実に26年もかかっています。
この間、FITは繰り返し国連に働きかけを続けてきたようで、その積み重ねがようやく形になったのが2017年5月24日の決議71/288でした。
決議のタイトルは「国家をつなげる言語専門職の役割について」というもので、翻訳者だけでなく通訳者や用語専門家も含めた広い意味での言語専門職全体を評価する内容になっています。
一つの職業団体の呼びかけが、四半世紀以上を経て国際社会全体の公式な記念日にまで育っていったというのは、地道な活動の積み重ねの大切さを感じさせる話だなと思います。
世界翻訳の日の歴代テーマ一覧
ここを読むと世界翻訳の日が毎年どんなテーマを掲げてきたのかがわかります。
主なテーマの移り変わり
FITは毎年、世界翻訳の日に合わせてテーマを発表しています。
例えば1999年は「翻訳と移行」、2001年は「翻訳と倫理」、2003年は「翻訳者の権利」、2005年は「翻訳と人権」といったテーマが掲げられてきました。
年によって技術面に焦点を当てたり、社会的な役割に焦点を当てたりとその時代の課題を反映した内容になっているのが特徴です。
こういうテーマの積み重ねを見ていくと、翻訳という仕事が単純な言葉の変換作業ではなく、社会そのものと深く関わってきた仕事だということがよくわかりますね。
2026年のテーマ「言語の多彩さと言語権」
2026年の世界翻訳の日のテーマは「Linguistic Diversity and Language Rights(言語の多彩さと言語権)」で、副題として「the power of being understood(理解される力)」が添えられています。
FITはこのテーマについて翻訳や通訳、用語整備が人権や文化の持続性、民主的な参加を支える専門職であることを再確認するものだと説明しているようです。
個人的にはAI翻訳がどんどん普及している今の時代に「理解される力」という言葉を掲げてきたのは、なかなか意味深いなと感じました。
技術がどれだけ進んでも理解し合うという行為の重みは変わらないというメッセージのように受け取れます。
世界翻訳の日が持つ意義ー翻訳者の役割
ここでは世界翻訳の日が今の社会にとってどんな意味を持つのかをまとめます。
平和や相互理解への貢献
国連決議71/288では専門的な翻訳が国家間の対話や理解、協力を促進し、開発を後押しし、世界の平和と安全の強化に貢献すると明記されています。
ニュースや外交文書、医療情報や災害時の緊急情報など、翻訳が担う場面は実生活のあらゆるところに広がっているんですよね。
翻訳者や通訳者の仕事が普段は目立たない分野だからこそ、この日を通じて改めてその存在に光を当てる意義があるのだと思います。
日本の翻訳市場から見る重要性
日本国内の翻訳や通訳の市場規模は2023年度の予測で約3,080億円に達するとされています。
ビジネスや医療、法律、技術、エンターテインメントなど幅広い分野で外国語コミュニケーションの需要が高まっていることを示す数字だと考えられます。
加えて近年はニューラル機械翻訳の進化が著しく、DeepLやGoogle翻訳、生成AIの翻訳機能などが一次翻訳を担い、そのあとを人が仕上げるという分業体制も広がってきているようです。
ざっくりした感じで言うとAIが翻訳の速度を担い、人間が翻訳の精度や文化的な適切さを担うという役割分担が、これからの翻訳業界の一つの方向性になっていくのかもしれません。
まとめ
世界翻訳の日について由来や歴史のポイントを整理しておきますね。
- 9月30日は聖ヒエロニムスの命日にちなんだ記念日で、彼はラテン語訳聖書ウルガタを完成させた翻訳者の守護聖人とされている
- 国際翻訳家連盟(FIT)が1953年の設立以来この日を祝う活動を続け、1991年に正式な記念日として制定した
- 2017年5月24日、国連総会が決議71/288を採択し、9月30日を国際翻訳デーとして公式に承認した
- 毎年FITがテーマを発表し、2026年は「言語の多彩さと言語権ー理解される力」がテーマに掲げられている
- 日本の翻訳市場は3,080億円規模とされ、AI翻訳の進化とともに人と技術の役割分担が今後の課題になっている
こうして振り返ると世界翻訳の日は一人の聖職者の命日から始まって、一つの職業団体の草の根運動を経て、国際社会全体の公式行事にまで育っていった記念日なんですね。
翻訳という仕事に少しでも関わりのある方は9月30日をきっかけに、自分の仕事の意味を改めて見つめ直してみるのもいいかもしれません😊

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